2.3.6 交通情報

交通情報

空港内、もしくは空港周辺の航空機の情報を発出する方法を説明します。

※この項目には他の項目に比べ、VATSIM特有の環境に起因する独自の解釈・運用等を多く含みますが、S2実技試験の基準は本記述に従います。

目視管制の原則

飛行場管制官は、原則としてタワーからの目視情報に基づく管制を行います。従って、VRCのレーダーから得られる情報をフルに利用して情報提供を行うことはできません(ただし、後述のレーダーに準ずる補助装置の利用は可能です)。目視情報に基づき交通情報を発出する場合は、以下の用語を用います。

トラフィック〔航空機の型式〕〔位置〕
TRAFFIC,〔type of aircraft〕〔position〕

型式に航空会社名等を付加できる場合は付加します。航空機に対する相対的な位置関係を伝えるときは、原則として「右」「左」「前」「後ろ」等の語を用い、16方位や磁方位は利用しないようにします。また位置情報の他に、現在や未来の行動をわかりやすく簡潔に述べても構いません。

Traffic, Cessna 172 on base.

Traffic, Boeing 737 on downwind to your right side.

Traffic, JAL Airbus 350 on C taxiway will cross ahead of you.

 

レーダーに準ずる補助装置

飛行場管制の原則は前述のとおり目視管制ですが、日本のほとんどの空港では、正確な航空機の位置情報を得るため、以下に挙げるレーダーに準ずる補助装置を導入しています。この文書内では、これらをまとめて説明のため準レーダーと称します。

  • タワーブライトディスプレイ
  • 航空機位置情報表示装置 (APID)
  • 空港用航空機位置表示装置 (APDU)

なおタワーブライトディスプレイ/APDUと、APIDでは利用の方法に細かな違いがありますが、VATJPNにおいては、全ての空港にタワーブライトディスプレイもしくはAPDUが導入されているものとして情報を提供して構いません。

 

準レーダーで位置情報を得られる航空機の条件

VRCでは、バーチャル空間内の全ての航空機の情報が漏れ無く表示されますが、全ての航空機を準レーダーで位置確認できるわけではありません。VATJPNでは、現実の条件に準じる以下の条件を満たした航空機に対して、準レーダーでの位置確認を行えるものとします。

  • APPやCTRから、VRC上でレーダーハンドオフを受けた航空機
  • UNICOMから入ってきた航空機のうち、APPまたはCTRが存在すれば確実にハンドオフを受けるはずだったもの (IFR進入機等)
  • 自空港から出発した航空機

上記以外の航空機については、以下のどちらかの条件を満たした後に準レーダーで位置を確認できるものとします。

  • パイロットから通報された位置情報と準レーダー上の表示位置が一致していることを確認した場合
  • IDENTの送信を指示し、IDENT信号を確認した場合

位置通報を照合する場合の例

JA815C, report position.

8NM south of airport, JA815C.

(正しいことを確認後) JA815C, copy.

※最初の通信時にパイロットから位置の報告があった場合、準レーダー上で位置を確認できればこの手続きは必要ありません。

IDENTを識別する場合の例

JA815C, IDNET for position confirmation.

(IDENTを確認後) JA815C, IDENT observed.

※準レーダーは空港/航空路監視レーダーと区別されるものであるため、どちらの場合も、"RADAR CONTACT." の用語を用いてはいけません。

 

準レーダーを用いた交通情報の発出

航空機に対して、準レーダーにより得た航空機の位置情報を通報する場合は、以下の用語を用います。

トラフィック、 〔飛行場又はフィックス〕 から 〔方向〕 〔数値〕 海里、 〔方向〕 へ進行中( 〔高度/フライトレベル〕 、 〔航空機型式〕 )
TRAFFIC, 〔number〕 MILES 〔direction〕 OF 〔airport or fix〕 〔direction〕 BOUND. ( 〔altitude / flight level〕 , 〔type of aircraft〕 ).

Traffic, 10 miles south of airport, northbound.

Traffic, 5 miles north of airport, proceeding right base, 2000 , HDJT.

また、アプローチ中のトラフィックの情報については、以下のような発出も可とします。

Traffic, ANA Boeing 787, 8 miles on final.

Traffic, Beach Baron58, approaching MIXER.

 

準レーダーの使用制限

準レーダーは、航空機の位置情報を得て、情報の提供や間隔の把握を行うことのみに利用することができます。実質的には、上述した交通情報の発出以外には使用できないものと考えてください。特に、以下のようなことを行わないように注意してください。

  • レーダーベクター
  • レーダー識別済み航空機に対してのみ行える交通情報の発出 ("XX o'clock XX NM ~" という用語の使用)